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 一ノ瀬トキヤと一十木音也が早乙女学園の同期とともにST☆RISHとしてデビューして数年。人気も安定し、最近は「新人」とよばれなくなって久しい。
 メディアでは一日に一回はメンバーの誰かが登場し、冠番組も始まり、順風満々のアイドル生活を送っている。そんな中、トキヤと音也も多くのメディアに露出して、異性や同性のファンを魅了していた。
 二人は学生時代の同室が縁で、メディアに出演するときに、よくワンセットとして扱われる。そうしてそれが度重なり、ファンからは「ライバル」「親友」という見方をされるようになった。実際に、オフの日に音也がトキヤの部屋へ遊びに来たり、楽屋でじゃれついて来たりしており、あながち間違いではない。
 そうして、オフでも音也と顔を合わせ、ファンには見せない姿を見ることができる関係に、トキヤは満足していたのだ。
 それなのに――。


「ふ……んっ」
 トキヤはベッドに持ち込んだタオルを噛み締めて、声を漏らすのを堪えた。
 ベッドへ俯せになり、音也に背後から腰を掴まれている。伏せた犬のような格好で、トキヤはこの時間が早く過ぎるのを待った。
「は……ぁっ」
 背後で音也が吐く息は酒臭い。アルコールに酔った音也に、トキヤは犯されていた。
 なぜこんな関係になってしまったのか。
 トキヤは胸中で苦悩する。
 酔った勢い。そんな言い訳が通じるのは、初めの一回だけだろう。音也が酔ってトキヤにのし掛かってくる。そんな事をもう片手の指で足りないくらい繰り返していた。
「――――っ!」
 腰を掴む音也の指に力が入った。そうして、トキヤの中に生温かいものが広がっていく。ようやく音也が達したのだ。
 音也が全てを出し切るようにトキヤの尻に腰を擦りつける。尻にあたる陰毛の感触に、トキヤはタオルを握り締めた。
 そうして力を失ったものがズルリと抜け出て行く。その瞬間の不快感に、トキヤはまた声を噛み殺す。
 そのままトキヤがタオルを抱きしめて音也に背を向けていると、背後から人の気配が消えて、玄関のドアの開閉音が聞こえた。音也が部屋から出て行ったのだ。
「―――ふ…ぅっ」
 それを確かめて、トキヤは嗚咽を漏らした。

(中略)


 音也はかなりの酒を飲んでいた。
 トキヤも一緒にいつも以上の量を飲んだのか、ベッドにクタリとその身を預けている。
 酔って顔を赤らめて、クタリとベッドに寄っ掛かったトキヤは、それはもう可愛くて。
 ボンヤリとしたトキヤに音也はにじり寄って呼びかけた。
「トキヤ〜寝たらだめー!」
 何度も言うが、音也も酔っていた。理性などほぼなくなっていた。
 だからまだまだトキヤと一緒にいたいと思った音也は、欲求のままに今にも眠りそうなトキヤの肩をゆさゆさと揺らしたのだ。
「おとや?」
 ヘニョリと笑ったトキヤは、音也が見た中でも五本指に入るくらい、可愛かった。それはもう、比喩でなく食べてしまいたいくらい。
 酔って呂律が回らず、舌足らずにボンヤリとしているトキヤに、音也の僅かに残っていた理性の糸は切れてしまう。
「トッキヤ――!」
「ん!」
 薄く開いていたトキヤの唇に、音也はディープキスをしていた。
 驚いたように目をきょろきょろさせるトキヤが、また可愛くて。普段は綺麗な歌声を紡ぐ口を、音也は貪り食らっていた。
 いくら酔っていても、さすがに拒否されると頭の隅では音也も覚悟していた。
 だから、なぜかトキヤが縋り付くように音也の首へ腕を回したことに、音也は有頂天になった。
 両腕でトキヤの腰を引き寄せて、抱きしめる。そうしてさらに深く唇を重ねた。
 トキヤは体に力が入っておらず、しなだれかかるように音也に体重を預けてきた。その華奢な腰を抱き上げて、音也は自分の膝へトキヤを乗せてしまう。
「ぅ……ん」
 時折艶やかなトキヤの声が漏れた。
 同じくらいの身長の二人は、音也の膝の高さ分だけトキヤの顔が上になる。
 僅かでも唇が離れると、トキヤはまるで乳を貰う幼子のように、自分から舌を伸ばして音也に吸い付いてきた。
 そのエロくて可愛いトキヤの様子は、ダイレクトに音也の股間を刺激してしまった。
「ねぇ…――抱きたい」
 欲望に濡れた音也の問いは擦れていた。
 みっともないくらい余裕のない声で。欲望を隠すことなく、煌めく夜空のようなトキヤの瞳を音也は見つめた。断られるかもしれないとか、そんな事を考える余裕さえなかった。
 だから、なぜかトキヤがコクリと頷いたとき、初めて拒否される可能性に気が付き、音也はトキヤの了承に心底驚いた。
「いいの?本当?」
 音也は何度も確認した。どう考えても、トキヤにいいことなど一つもない。
 けれどトキヤは「貴方の好きになさい」そう言ったのだ。
 欲望の箍が外れた音也は、トキヤの言葉に乗っかってしまった。
「トキヤ――ッ」
 音也は身長の割に軽いトキヤの体を、ベッドの上に乗り上げて、押し倒した。
 ずっと大好きだったトキヤとのセックスだ。音也はそれはもう宝ものを扱うように、トキヤを大切に抱いた。
 身体をまさぐる手に身を捩るトキヤの肌は、アルコールのせいかほのかに色づいており、シーツの白によく映えた。
 初めはボンヤリと音也の動きを目で追っていたトキヤは、その自身を音也の口に含まれて、思考を飛ばしてしまった。
「―――あ、……やぁっ!まっ……」
 そんなトキヤに、音也はことあるごとに「好きだよ」と囁いた。
 音也が太股を掴んで脚を開かせ、トキヤのものを舐めしゃぶると、キュッと爪先を丸めて、トキヤの手が音也の頭に置かれた。
 もっとと押しつけているのか、嫌だと押しのけているか分からないくらいの力加減の手が、音也の髪の毛を弄り舞わした。
「おと…やぁ……」
 トロリと甘く溶けたトキヤの声で名前を呼ばれると、音也は天にも昇るような気持ちになる。
 もっと気持ち良くなって欲しい。そんな気持ちで、音也はトキヤのものをより深く銜え込み、さらに奥に隠されている後孔へそっと指を忍ばせた。
 トキヤの先走りと、音也の唾液が流れて湿った入り口に、音也はそっと人差し指を差し込んだ。アルコールで適度に力が抜けているのがよいのか、トキヤのそこは思ったよりスムーズに指一本を飲み込んだ。
 中を慎重に探ると、プクリとしたシコリを見つける。そこを摩ると、トキヤが腰を跳ね上げて嬌声を上げた。
「い――やぁぁああ!」
 音也の口の中のトキヤ自身から、先走りが溢れる。
「きもじぃぃ?」
 塞がった口では上手く発声出来ずに、音也の問いは意味を成さなかった。
 さらにそこをクリクリと弄ると、トキヤの腰はビクンビクンと痙攣した。
 あまり長くは保ちそうにないと判断した音也は、トキヤの中の指を二本に増やして、前立腺を刺激しないように拡張へ集中した。
 先ほどの快感が忘れられないのか、尻をもじつかせたトキヤに、音也はそっと指を引き抜いて、トキヤの膝を抱える。
 ボンヤリと音也を眺めるトキヤの顔は、普段の澄ました様子が嘘のように、飲み込みきれなかった唾液と汗と涙でグチャグチャだった。
 けれどそれが音也によって作られた姿だと思うと、音也の中には愛しさしか生まれない。
「挿れるね」
 もうほとんど意識のないトキヤに囁いて、音也はトキヤの狭い後孔をこじ開けた。
「―――ヒッ……ィ」
 喉を引きつらせるトキヤに、音也は優しく背中を撫でながら、「大好き」と囁いた。
 そうしたらトキヤの体から僅かに力が抜けたから、音也は何度も「大好き」と言葉を重ねた。

(後略)

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