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「トッキヤ――!」
 廊下を歩いていると、背後から聞こえてきた声に、トキヤは足を止める。
「音也、廊下は走らない!」
 何度繰り返しても直らない音也だが、今日もトキヤは注意する。
 言われて思い出したのか、キキーッと音がしそうなほど急ブレーキを掛けて音也は停止した。
「もう終わりだろ!?一緒に帰ろう」
 ニコニコと笑いながら問いかける音也に、断る理由もなくトキヤは頷く。
「いいですよ」


 二人とも明日はオフだった。休みが丸一日重なることなど、滅多にない。だから、トキヤも音也もこの日を楽しみにしていた。
 音也が風呂に入っている間、トキヤは台本を取り出す。
 ドラマや映画の経験は何度もあるトキヤだったが、次の仕事は外国のアニメーションの吹き替えという初めての分野で、手探りで練習している最中だった。
 初めにこの話を聞いたとき、トキヤはなぜ自分にと疑問に思った。
 トキヤの役柄は、雌鳥に憧れる雄鳥という理解不能な設定で、本当に演じられるのかと自問自答してしまった。けれど、せっかくもらえた仕事を断るという選択肢もなく、やるからにはベストな仕事をしたいと、こうして暇を見つけては台本を読み込んでいる。
「お待たせ〜〜」
 ほかほかに温まった音也が、浴室から姿を現す。それを見て、トキヤはテーブルに台本を置き、入れ違いで浴室に入った。


 ゆっくりと半身浴を楽しんで浴室からトキヤが出ると、リビングのソファーで音也が横になって、先ほどトキヤがテーブルに置きっぱなしにした台本を読んでいた。
「お待たせしました」
 その言葉に、音也が顔を上げる。
「お待ちしてました」
 悪戯っぽく笑いながら、音也は立ち上がった。そのまま二人で寝室を目指す。
「あの話」
 唐突な会話に、トキヤは音也を見る。脈絡なく会話が始まるのは、音也との会話の中ではよくあることで、いい加減トキヤも慣れている。
「うちのチビたちも、超楽しみにしてるんだ〜〜」
 音也の言うチビたちとは、音也が育った施設の子供たちだろう。人気アイドルと言われるようになっても、音也は時間を見つけては施設に帰って子供たちの相手をしている。
「そうなんですか?」
 知識として、子供に人気の物語だと知っているけれど、その人気をトキヤが目の当たりにしたことはない。
 雌鳥に憧れる雄鳥の話のどこが子供に魅力的に映るのか。
 いまだに掴みきれない役柄に、自然と眉間に皺が寄っていたのだろう。
「トキヤ、もしかして役作りで悩んでる?」
 昔のトキヤなら、悩み――特に個人の仕事の悩みを、他人に相談しようなど、思いつきもしなかっただろう。けれど今は、守秘義務に抵触しない程度に、誰かに相談することも覚えた。
「ええ……なかなか役柄が掴めなくて――」
 思わず声が暗くなってしまう。
「そもそも雌鳥のどこにそこまでの魅力があるのか、私には理解出来ない」
 ないものへの憧れ。異性の神秘。そんなものの暗喩だと考えても、どうもしっくり来ないのだ。
「ふ〜〜ん……」
 音也が何かいい案がないかと、首を傾げる。
「そうだ!じゃあ、先に雌鳥になりきってみればいいんじゃない@」
 よいアイディアだと音也は瞳を輝かせる。
「そう……です、ね?」
 自身でよい案が浮かばないトキヤは、音也の意見を否定することが出来ずに、首を傾げながら頷いた。
「だって雄鳥が憧れるくらい雌鳥って凄いんでしょ!だから、雌鳥になりきって、雌鳥のことを知れば、雄鳥のこともわかるよ!」
「――まぁ……一理ありますか」
 音也の言うことに納得したトキヤは、雌鳥になりきるにはどうすれば、と再び考え始める。
「雌鳥っていえば、これしかないよ!」


 音也の勢いに流されるまま、トキヤはベッドの上で裸になった。
 ついでに音也も脱いでいるのはご愛敬だ。
「いやぁ!」
 トキヤは音也に尻を向けて、四つん這いになって嬌声を上げる。
「雌鳥と雄鳥の一番の違いは、卵を産めることだよ」
 その一声で、なぜか産卵プレイに持ち込まれている。
 どこから取り出したのか、鶏卵大の偽物の卵がいくつか音也の手に握られている。それをピュッピュッとローションを流し込まれた後孔へ押し込まれていく。
 一個目はわりと簡単に入った。二個目も押し込まれて、先に入っている卵がさらに奥に入っていく。
 その感触に、トキヤは首を振る。
 先が細くなっている卵は、奥に入りやすい。そうは言っても最大直径はそれなりにある。前立腺を押しつぶしながら、卵は奥に押し込められていく。
「トキヤなら三個はいける」
 どこからそんな自信が出てくるのか。確信に満ちた音也は、二個の卵を押し込んで、さらに三個目をトキヤの後孔へ押し当てた。
「や……っ」
 これ以上は無理だと、尻を震わせながらトキヤは逃げを打つ。ジリッと膝を動かして、襞に当たる卵から逃げようとした。
「だ〜いじょうぶ!だいじょうぶ!」
 それなのに脳天気な声で音也は卵のずんぐりとした方をトキヤの中へ押し込んだ。
 太い部分が襞をくぐり抜けるまでは大変でも、それを越えてしまえば、あとは押し込みさえすればずぶずぶと入っていく。
「ヒ――ィッ」
 限界ギリギリまで卵が押し込まれて、トキヤは悲鳴を上げた。
「ほら、入った」
 今にも襞から飛び出しそうなほど、ギリギリで卵が後孔へ収まっている。
 少しでも動いたら卵が零れ落ちそうで、トキヤは身動ぎも出来ずに、ベッドの上で震える。けれど、そんな状態にもかかわらず、トキヤのものはポタポタとみっともなく先走りを溢していた。
「お尻いっぱいに卵が入って、どんな気持ち?」
(中略)


「トキヤが卵を産むところを見せて」
 音也の声は擦れていた。
 そんな様子にフフッと笑ったトキヤは、下腹に力を込めた。排泄と同じ要領で卵を押し出す。
 襞に異物が挟まる感覚に、卵の先が外に出ていることがわかる。
「ふっ――ンッ」
 トキヤは息みながら、少しずつ排卵する。
「おと――やっ」
 シーツに付いた足裏に力を入れ、後孔から卵を押し出しながらトキヤが音也を見ると、音也の視線はトキヤの後孔へ釘付けになっていた。
 そうの上音也の腹部には、完全に勃起した音也のものがそびえ立っていて、トキヤはさらに音也を煽るように腰をくねらせる。
「あ――ああっ」
 艶やかな声を上げながら、トキヤは一個目の卵を産み落とした。
 その勢いのまま、二個目の卵が後孔から顔を出している。弛んだ後孔はふっくらと口を開け、白い卵に絡みつく。
 トキヤの後孔のそばでテラテラと光る卵は、本当に産まれたばかりの様相で。
 半分ほど顔を出した卵とぶつかって音を立てる。
「あ――っ」
 それに驚いたトキヤの動きで、顔を出していた卵が後孔へ引っ込んでいく。
「あ……うっ」
 それにトキヤは喉を仰け反らせて呻いた。
「おとやぁ……」

(後略)

〜2本目〜


「俺の家まででお願い」
 トキヤの隣で、音也が上目遣いになりながら、運転手兼マネージャーに声を掛ける。
「一ノ瀬さんもちゃんとお送りしますよ」
「いや。明日トキヤオフだし、俺の所に泊まるから大丈夫」
 トキヤの意見を訊かれることなく、明日の予定が決まっている。「待ってください」と止めたいけれど、今の音也にそんなことを言おうものなら藪蛇だ。
 トキヤは大人しく音也の横で座って待つ。
「そうですか?」
 チラリとバックミラー越しにマネージャーと目が合う。トキヤは曖昧に笑いながら、頷いた。
「ひさしぶりに音也と音楽について語ろうと思うので」
 トキヤの言葉に納得したのか、マネージャーが頷きながらステアリングを握る。
「本当、お二人は仲がよいですね〜〜」
 その言葉が、トキヤの耳奥にいつまでも残った。


 音也のマンションに着いて、――正確には、最近までトキヤも住んでいた事務所の社宅だが――トキヤは足取り重く音也の後を付いていく。
「ただいま〜〜」
 無人だった室内に、音也の声が響いた。
「さて、トキヤ?」
 リビングに通じる廊下で立ち止まった音也が振り向いた。
「ちゃんと俺に理由を説明してくれるんだよね?」
 トキヤだってちゃんと音也に話をする気はあった。けれどこうあらたまられると言いづらく。
 口ごもっている間に、音也の表情がますます剣呑になっていく。
「ふ〜〜ん……そう」
 不満に満ちた声を出しながら、音也は嘆息する。
「トキヤがそのつもりなら」
 急に距離を詰めてきた音也が、トキヤの腕を掴んだ。
「なにを――ッ」
 バスルームに引っ張り込まれて、着ていたワイシャツのボタンを引きちぎられる。
 音也はそのままシャワーのコックを捻り、トキヤにシャワーヘッドを向けてきた。
「わッ」
 顔面に水がかかり、トキヤは驚いて声をあげる。肩に掛かったままのシャツも、ベルトを弛めてさえいないズボンもビショビショに濡れてしまう。
 セットされていた髪の毛からも雫が落ちて、頬を濡らす。
「濡れちゃったね〜〜服を脱がないと風邪をひくよ?」
 一見心配している風だが、明らかに命令だった。
 トキヤが音也の様子を窺うと、服を脱がなければ解放されそうにない。トキヤは迷うように両手を握り締めた。
「あれ……脱がせて欲しい?」
 そう訊かれて、ブンブンと頭を振る。幼い子供のようなまね、出来るはずがない。
「じゃあ脱げるよね」
 言外の強制力に、トキヤは渋々服を脱ぎ始める。
 肌に張り付いたシャツを床に落とし、ベルトを弛める。そのまま右脚左脚と順にズボンを抜き取り、下着姿になった。先ほど音也が掛けたシャワーの水で、下着も濡れてしまっている。
 その様子をジロジロと観察され、トキヤは羞恥に頬を赤らめた。
「これでいいでしょう@」
 両腕で自分の身体を抱いて、トキヤは音也を見た。
「ふ〜〜ん」
 どこか不満そうに音也は声を上げる。
「まあいいや」
 けれど、一応の了承がされる。
「じゃあ、両手を出して」
 当たり前のように要求された次のことに、トキヤの中で嫌な予感が大きくなる。
 過去の経験からも、音也の前に両腕を揃えて出してどうなるかなど明らかだった。
 この音也の部屋は、トキヤが知らぬうちに音也仕様にかなりカスタマイズされている。この浴室もそうだった。
 チラリと見上げると、シャワーヘッドを引っかけるフックの側に、輪っかが設置されている。あれに手錠を通し、両手を固定されたことが、過去何度かある。そのときのプレイは、トキヤにとってどんなプレイより羞恥を感じるものだった。
 嫌だと意志を伝えようと音也を見たトキヤは、言葉を詰まらせる。音也の目がノーは許さないと雄弁に語っている。
 トキヤが苦手なプレイだと知ってあえて強制する。それほど音也は不機嫌なのだ。
 トキヤの中で様々な計算が浮かぶ。けれど結局はこれ以上音也を刺激するのは得策ではないという結論しかでてこない。
 以前されたプレイでも、許容出来ないくらい恥ずかしかったのに、それ以上のプレイを要求されたら堪ったものじゃない。
 トキヤは無言で音也に両手を差し出した。
 どこから取り出したのか。カチャカチャと金属が擦れる音がする。反らした視線の端で、音也がトキヤに手錠を掛けて、鎖を通している。
 トキヤの予想通り、その鎖を引っ張られて、両手を壁に固定されてしまった。
「じゃあまずはきれいにしようか」
 朗らかに言っているけれど、その言葉はトキヤを絶望に突き落とす。「きれい」にするのが外側だけならいいか、そんなわけがない。
「パンツ脱がせるよ」
 音也はトキヤの答えを待たずに、トキヤの履いた下着に手を掛けた。
 一気にずり下ろされる。
 僅かに勃起しているものが、下着からこぼれ出す。
「あは……っ!おっきくなってるね」
 掌に包み込まれるように握られて、トキヤの腰がビクンと揺れる。
 音也は掌で転がすようにトキヤのものを弄んだ。
「――ッ」
 ここで嬌声を上げようものなら、音也にそれをたてに責め苛まれるのが目に見えている。
 トキヤは感じやすい己を押さえ込み、辛うじて嬌声を上げるのを耐えた。
「こっちはあとで、ね」
 音也もそれ以上するつもりがないのか、亀頭を撫でて手を離してくれた。
「じゃあ、とっとときれいにしちゃおうね」
 壁と対面するように後ろを向かされ、尻を突き出す姿勢をとらされる。
 これから行われることなど、一つしか考えられない。
 トキヤはギュッと目を瞑って、浴室の壁に胸と頬を押しつけた。
「ん、今日もいい色」
 尻を掴まれて、割れ目を広げるように左右に引っ張られる。トキヤは音也に双丘を広げられ、尻穴を観察されてしまう。
「昔はキュッて窄まって、清楚な感じだったけど」
 そう言いながら、入り口を音也の指がなぞる。
「もうふっくらしてる。エッチな孔になっちゃったね〜〜」
 そうしたのは紛れもなく音也なのに。まるでトキヤが淫乱なような言い草だった。
 確かに音也に性的なことをされると、身も世もなく乱れてしまう。けれどそれは音也だからだし、そうなるようにトキヤの身体を拓いたのも音也だ。
「でも……淫乱なトキヤも、好きだよ」
 チュッと尻の緩やかな丘にキスをされる。その好意にか、「好き」と言われたからか、トキヤの体温は上昇して、白い肌が染まっていく。
 どうしたってトキヤは音也が好きで、「惚れた方が負け」と言うように、恋愛においてトキヤの負けは確定していた。
 そのまま音也の気配が少し離れて、背後で器具がぶつかり合う音が響く。これからトキヤが苦手な時間が始まるのだ。
 何度もその手順を踏んだ音也は、慣れたものだ。すぐに準備は終わり、トキヤの背後に戻ってくる。
 尻に音也の手が触れて、トキヤは思いきって口を開けた。
「あの……音也――」
 ゴクリと喉が鳴る。この願いを口に出すのは諸刃の剣だった。それでも。
「アナルプラグを使ってもらえますか」
 限界まで自力で我慢するより、器具で強制的に栓をして、ただ腹の痛みに耐える方が楽だ。
「え――」
 迷うような声に、トキヤの心臓はドキドキと鼓動を早める。この後の命運は、全て音也の手の内だ。
「最初だけだよ」
 ツンと入り口を突かれて、手錠が音を立てる。
 無意識に後孔をキュウッと収縮させていた。
「ありがとう、ございます」
 なぜ礼を言うのか。そんな疑問が浮かぶ余地がないほど、いつの間にかトキヤは音也に躾けられている。
 ツプリと差し込まれたシリンジの先端に、トキヤは両脚に力を入れて両手を握り締めた。
 じわじわと先端から微温湯が出てくる。音也はこういうとき薬剤を使わない。頻繁に使うとくせになって便秘になるそうだ。トキヤがそんなことになったら大変だと言っていた。
 トキヤの飲食状況は把握しやすく管理しやすい面もあるのだろう。大量の湯を注いで、何度も洗浄を繰り返す。粘膜を傷付けないためのローションも、原材料を吟味して購入している。そんなところに愛を感じてしまうトキヤは、きっともう後戻り出来ない。
 どんどんと中に入ってくる液体に、下腹がポッコリと膨れてくる。今日はどれだけの量を入れられてしまうのか。
 以前お仕置きだと言われ、限界ギリギリまで入れられたことがあるが、そのときは何度か意識が朦朧としてしまった。
 その経験から、トキヤの限界量はわかっている。
 これで終わりではないから、ほどほどの量で止めてくれるはずだが。
「……っ」
 段々と圧迫感が増してくる。トキヤは耐えるように握り締めた両手に力を入れる。
「あと五十ccは頑張って」
 脚がプルプルと震え初めて、限界が近づいてくる。それなのに無情にも、音也はもう少し我慢しろと言う。
 「無理です」と言いたいけれど、今の音也が受け付けてくれるはずもなく、トキヤは無言で首を振った。
「ほら、もう少しだから」
 宥めるように尻にキスが振る。
 トキヤは後孔をキュウッと締め付けて、何とか耐えた。
「はい。初めはこの位ね」
 シリンジが抜けていく。粗相をしないように、トキヤは後孔に力を入れる。それでも隙間から少しだけ水が零れだした。
 今回はこれが目的でないのだろう。それは指摘されずに、アナルプラグが入り口に押しつけられる。
 そのまま押し込まれて、トキヤはようやく息を吐いた。
 ポッコリと飛び出た腹に、いったいどれだけの量を入れられたのか。
 視界に入る下腹に、トキヤは苦々しく思う。
「よっと」
 立ち上がった音也が、背後からトキヤに覆い被さってくる。いつの間にか、音也も裸になっている。その高い体温に、トキヤは無意識に安心してしまう。
 けれど、トキヤの涙目が可愛いと言ってはばからない音也が、それで終わるはずがない。
 下腹に伸ばされた手が、トキヤのものに指を絡めた。
「浣腸されても萎えないね」
 竿の部分を擦りながら耳元で囁く音也は、今のトキヤにとって悪魔のようだ。変態だと罵られた気分で、トキヤは真っ赤になる。
 そのまま性器を弄りながら、張った腹にももう片手が伸びる。
 やわやわと揉み込まれて、トキヤは出そうになった悲鳴を飲み込んだ。
 すでにパンパンな状態でそんなことをされれば、たまったものじゃない。喉からは呻き声が漏れてしまう。
「この量なら大丈夫だから」
 肩口に音也の顎が当たる。耳元で優しく囁かれても、その内容は全く優しくない。
 トキヤの目尻に、段々と生理的な涙が堪ってくる。
「いいこいいこ」
 片手で腹、もう片手で性器を揉まれて、トキヤは嫌だと首を振った。お腹は痛いはずなのに、前はどんどん滾って育っていく。
 動き出した腸が、後孔を塞ぐ異物を押し出そうと蠢いている。いつもはひっそりと息づく襞が、ふっくらと盛り上がり、ピクピクと痙攣する。
「音也……っ」
 許して欲しい。そう思ってトキヤは音也の名前を呼んだ。
「もうちょっと頑張って」
 このまま出してしまったら、洗浄の回数が増えるだけだと、トキヤもわかっている。けれど、それでも限界だった。
「――ッ」
 トキヤは「無理だ、限界だ」と声に出さずに、ギュッと目を瞑って首を振る。その拍子に、目尻の涙が散った。
「大丈夫。トキヤは頑張り屋さんだもん」
 背後から目尻と頬に音也がキスをする。けれど「もう少し我慢しろ」と言うのは聞けない。
「やあっ……おとやぁ」
 普段はきれいな山形を描いている眉毛を下げて、トキヤは振り向いて音也を見る。
「もう、無理です……ぅ」
 酷く甘ったれた声が出た。
「大丈夫」
 トキヤの唇に音也の唇が重なる。チュッチュッと吸われて、トキヤはそっと舌を差し出した。
「――ン」
 チュウッと音也の唇にそれを吸われて、トキヤの腰に甘い痺れが走った。
 チュクチュクと水音を立てながら、舌が絡まる。トキヤは無意識にアナルプラグの埋まった尻を音也の腰に擦りつけながら、音也の舌の動きに陶然となった。
「キスをして上げるから、頑張ろう?」
 ボウッとなったトキヤは、音也に何を言われているのかきちんと把握せずに、コクリと頷いた。
「いいこ」
 もう一度舌が絡まる。
 まるで赤ん坊が母親の乳を吸うように、トキヤは音也の舌に吸い付いて、チュウチュウ音を立てる。
 トキヤの膝は笑ってしまい、すでに背後の音也に抱えられているから、立っていられる状態だ。
 トキヤは腹が張って痛かったのも忘れてしまったかのように、後孔を埋めるアナルプラグを締め付けた。その音也のものと違う感触に、トキヤは寂しくなる。
 早く音也のものでいっぱいにして欲しい。
「おとやぁ……ほし――いっ」
 モジモジと内股を擦りながら、尻を突き出した。
 普段禁欲的なトキヤは、いったん箍が弛んでしまうと、あっと言う間に理性が崩れ去っていく。もう音也のそれで尻の中をいっぱいにして欲しいとしか考えられない。
「まだ、ダメ」
 それなのに無情な音也の言葉に、トキヤはじんわりと涙が溢れてくる。
「泣いてもダメ。まだお尻の中、きれいになってないでしょ」
「もう大丈夫、ですからぁ……」
 子供の駄々のようなトキヤの返事に、音也はメッと叱る。
「やぁ……」
 グズグズと泣き出したトキヤに、音也は仕方ないなぁという表情をする。
「じゃあ、今からこれを抜くから、出てきた水がきれいだったら入れて上げる」
(後略)


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◆◇◆sinceMay 20, 2012スタイルシート多用◆◇◆