Stop!Under 18 years old
* * *
一ノ瀬トキヤの十八歳の誕生日。音也は絶望にうちひしがれていた。
「イッキどうしたんだい?」
そんな音也の様子に、偶々一緒になったレンが声を掛ける。
「ぅぅ〜〜レン〜〜」
涙交じりの音也は、机に懐いた状態でレンを見上げた。
「トキヤが〜〜」
レンは何となくそれで事情を察する。ST☆RISHを結成してそろそろ一年。早乙女学園を無事卒業してアイドル活動をスタートさせた六人は、日々レッスンに仕事にと取り組んでいた。そんな中、音也とトキヤが付き合うようになったのは周知の事実で。初めは恋愛禁止令もあり、隠そうとしたらしい。けれど嘘のつけない音也のこと。案の定、メンバー全員の知られるところになっていた。
「今日から俺の誕生日まで、エッチ禁止って言うんだっ」
レンは痛む頭に手を添える。いくら愛の伝道師を自認していても、出来ればメンバー間の恋愛トラブルにはあまり首を突っ込みたくはない。
「イッキの誕生日までって八ヶ月はあるじゃないか。イッキは何をしたんだい?」
生真面目なトキヤとおおらかな音也。大概音也がトキヤの琴線に触れて、トキヤがヒステリーを起こす流れだった。
「何もしてないよ!」
まるで音也に非があるようなレンの言葉に、音也が噛み付くように反論する。
「『今日から私は十八歳。あなたはまだ十七歳です。十八歳未満の青少年にそういうことをすると条例違反になるんです。だからあなたが十八歳になるまで、プラトニックでいましょう』って!」
音也はトキヤの声まねをしながら主張する。
「昨日までエッチしてたのに、八ヶ月も我慢なんて出来ないよ」
その場面まで想像出来てしまい、レンは視線を遠くやる。
「まあ、イッチーの言い分も一理あるから、イッキはイッチーとよく話しあいなよ」
流石のレンも、こればかりはアドバイスしようがない。トキヤの言い分ももっともで。実際に条例違反で訴えられるかは別として、十八歳未満の青少年とそういうことをするには、リスクが付きまとう。
レンは音也の肩をポンポンと叩いて、音也の前から立ち去った。
「一十木。どうしたんだ?」
肩を怒らせている音也に、真斗が声を掛ける。
「トキヤがっ」
勢いで話しそうになった音也は続きを押し込める。恋愛事が不得手な真斗に、生々しい話しを止める程度の理性は残っていた。
「一ノ瀬がどうしたのか?」
清廉な眼差しで訊かれて、音也は声を詰まらせる。真斗を見ていると、いかに自身が俗物であるか自覚を促されてしまう。
「何でもない」
音也は首を振って真斗へにこりと笑いかける。
「そうか?俺で助けになるのなら、遠慮する必要はないぞ」
「大丈夫!」
空元気だったが音也は言い切って、話題を変える。
「そう言えばマサ、今度の雑誌の撮影だけど……」
「イッチー。今から出掛けるのかい?」
半年以上をかけてようやくHAYATOの仕事に区切りをつけたトキヤは、現在一ノ瀬トキヤとして精力的に活動を始めているところだ。レンから見ても、休みなくオーデションを受け、仕事をこなす様子は感嘆の溜息しか出ない。あまりの忙しさに、プライベートの時間などないのではと思わせるほどに。
「ええ、これからちょい役ですが、ドラマの撮影が入ってまして……」
ちょい役でも嬉しそうにはにかむトキヤは、本当に仕事が好きなのだと伝わってくる。
「さっきそこでイッキがうちひしがれていたよ」
「あああいつはぁ――」
トキヤが額を押さえて呻く。音也のうちひしがれている理由にだいたい察しがつくのだろう。
「確かに条例には引っかかるけど、流石に厳しすぎやしないかい?」
レンは少しだけ音也の援護射撃をする。レンにとって二人とも大切な仲間なのだ。けれど。
「私達の関係は、ただでさえマイノリティなんです。何かの拍子にばれて、条例を持ち出されたらどうするんです。それこそST☆RISHの芸能生命など蝋燭の火のように吹き消されるんですよ」
全くの正論に、レンも反論しようがない。
「イッチーの言うことももっともだけど、イッキも若いんだ。偶にはガス抜きも必要じゃないかい?近くにいるのにお預けにされて、他に目が行ったりしたらどうするんだい」
「音也に限って――」
トキヤはレンの主張を一笑にふす。一途にストレートに気持ちを表す音也が、そんなことするわけない。そう信じている様子だった。
「ああ、そろそろ時間です。すみませんが」
出掛ける時間が迫っているのだろう。トキヤがレンに断りを入れる。
「ああ――」
仕事を遅刻させるわけにもいかない。レンは頷いて行ってらっしゃいと表情を緩める。「今日は夜はイッチーのバースディパーティだ。待っているよ」
「ありがとうございます。なるべく早めに帰ってきます」
* * *
「ハッピーバースディ!」
クラッカーの音が響いて、部屋が明るくなる。夕食も兼ねて、今日はトキヤの誕生日会がST☆RISHのメンバーによって開催されていた。
並んだ料理にめいめい箸を伸ばす。主賓ということで、トキヤが帰ってきた頃には、準備は終わっていた。主に真斗が料理を担当して準備してくれたらしい。
綺麗に飾り付けられた料理は、どれも美味しくて。日頃節制しているトキヤも、つい手を伸ばしてしまう。
「音也」
隣で元気のない音也に、トキヤは嘆息しながら声を掛ける。音也が悄気ている理由はわかっている。わかっているがどうしようもないそれに、トキヤは口先だけの慰めなど言えない。
「今度の二十日。あなた、空いていますか?」
あとで音也のスケジュールを確認してから言おうと思っていたことを、トキヤは仕方なく切り出す。
「え?」
顔を上げた音也は、急いで携帯電話でスケジュールを調べ始めた。
「大丈夫っ」
期待の籠もった声に、トキヤは内心安堵の息を吐く。これで都合が合わなかったら、お互いにがっかりする事になった。
「一緒に映画を観に行きませんか?」
丁度トキヤが観たいと思っていた映画が上映期間で、この休みを逃すと多分上映期間が終わってしまう。アクション色の強い内容だから、音也も退屈しないだろうと、折角だからトキヤはデートを切り出してみる。
「行く!」
ぱあっと音也が喜色を浮かべる。
「絶対に行く!」
そんな音也の様子に、トキヤも頬を緩める。
「私もその日一日はオフなので、その前後は買い物でもしましょう」
「うんうん」
ブンブン首がもげるのではと思えるほど、音也が勢いよく首を縦に振って頷く。
「デートですか?」
音也の横に座っていた那月が、二人の様子に声を掛ける。
「げ……っ」
そんな那月にさらにその横の翔が声を上げている。
「みんな敢えて触れなかったのに……」
翔の呟きがトキヤの耳にまで届いたけれど、トキヤはそれを黙殺した。
「デートっ」
那月の質問に、目に見えて音也のテンションが上っている。トキヤにも音也の頭の中に、色とりどりの花が咲いているのだろうと想像がついた。
「デート……へへっ」
頬を赤くして喜ぶ音也に、トキヤは仕方ないと苦笑する。振り返ってみると、トキヤが多忙なのもあって、音也とトキヤはデートらしいことをしたことがなかった。
所謂初デートだ。
そう思うと、トキヤも俄然張り切ってくる。折角の初デートだ。失敗などしたくない。
デートスポットなどを折角だからインターネットで調べてみようと、トキヤは心の中で決めた。
待ちに待った初デート。そうデカデカと顔に書いた音也が、トキヤの目の前にいる。
「珍しく早いですね」
休日ともなればなかなか起きてこない音也が、トキヤの部屋の玄関に立っている。
「だってもう九時だよ」
確かに、トキヤにしてみれば「もう九時」だけれど、音也はいつも「まだ九時」だと言っている。
子供みたいな音也に、トキヤは仕方ないと肩を竦める。実際、トキヤもすでに出掛ける準備は終わっていた。
「わかりました。今から出掛ければ、丁度初回に間に合いそうですし、行きましょう」
トキヤはカバンと鍵を手に取って、腰を落として靴を履く。
それを音也はまだかまだかと玄関のドアを半開きにして待っている。
「早くっ」
急いでも映画の開始時間は変わりませんよ。トキヤは内心独りごち、立ち上がった。
「お待たせしました」
二人は歩いて駅へ向かう。不思議なものだ。ただ歩いているだけなのに、「デート」と名前が付くだけで、視界がキラキラと輝いている。
「あっ」
落ち着きのない音也は、キョロキョロとあっちを見てはこっちを見て、トキヤをはらはらさせる。
「あなた少しは落ち着きなさい。ほら、車道側を歩かない」
今にも飛び出してしまいそうな音也に、トキヤは車道側に割り込んで、音也を押しやった。
「ええ……っ」
それに不満の声を上げた音也に、トキヤは「何か?」と音也を見た。
「普通彼氏が車道側を歩くの!」
音也の言葉に、トキヤはムッとしてみせる。いくらそういう立場に甘んじていても。
「私はあなたの彼女になったつもりはありません」
そのトキヤの反応に、音也もハッと目を見開く。
「ご……ごめんっ俺そんなつもりじゃなくて――」
トキヤも音也の発言は、浮かれた上での失言だとわかっている。トキヤが抱かれているからといって、音也に護られたい訳じゃないと。そのくらい音也だって理解していることを、トキヤも知っている。だからこれは単なるポーズ。
しゅんと落ち込んだ音也を置いて、トキヤはスタスタ先を歩く。
五歩ほど歩いたところで、トキヤはくるりと振り返った。
「馬鹿ですね。そんなことわかっています。私達は対等なライバル、でしょう」
トキヤが笑って手を差し出せば、音也に喜色が浮かぶ。
「トキヤっ!」
手を差し出しただけなのに。音也はたたっと勢いをつけてトキヤへ飛びかかってきた。
「ちょ――ばっ!音也っ!!」
トキヤが静止しようとしたときには、すでに遅い。音也の重みを両脚で踏ん張って、トキヤは音也を何とか支えた。
「トキヤ〜〜!」
グリグリと額をトキヤの肩口に押しつけて、トキヤを呼ぶ音也に、結局トキヤは許してしまう。
仕方ないですね。そんな風に笑いながら、トキヤは音也の背中をポンポンと叩いた。
「ほら。早くしないと映画が始まってしまいます」
「うんっ」
力一杯頷いた音也が、トキヤの右手を握り締める。
「いこっトキヤ!」
トキヤの右手を引っ張りながら先を急ぐ音也に、トキヤも仕方ないと足を踏み出した。
二人は早足で駅へ向かう。
* * *
トキヤの誕生日から三か月ばかり経過した頃。
「もう無理っ!俺死んじゃうよう」
音也は偶々通りかかった翔をひっ捕まえて泣き言を溢していた。
「いや……俺の方が無理だから――」
翔の言葉は軽く無視される。
「三か月もトキヤに触れてないんだよっ。ちょっとくらいってお願いしても、ダメの一点張りでさあっ」
「ちょっとくらいって――」
後悔するのが解っていて、翔はつい訊いてしまう。
「先っぽだけ、触るだけ、ってお願いしても、あと五か月我慢しなさいって」
「いやいや完璧にそれってアウトだろ」
もう嫌だ。心の声を顔にでかでかと貼り付けて、翔は視線を遠くへやる。
「俺の息子が腐っちゃうよぉう」
おいおいと泣きまねをする音也を、翔は呆れた表情で眺めている。
「なあ、それって俺への当てつけか?そうだよな?童貞馬鹿にすんじゃねえよっ!」
言いながらヒートアップしてしまったのか。最後には翔はスパーンと音也の頭を叩いて立ち上がる。
「いいか!音也。トキヤの言うことは正論だ。だからお前もたった五か月、我慢しやがれ!!」
ビシィイと音がしそうなほど勢いよく音也を指さした翔は、捨て台詞とともに走り去った。
そんな一部始終に立ち会ってしまったレンは、笑いそうになるのを必死で堪えて、翔の背中を見送る。ついでに、見慣れた背中が視界をよぎるのを見逃して、音也へ近づいた。
「イッキ。だいぶ参っているね」
「レン〜〜」
誰でもよいのか、音也は今度はレンに縋り付くように視線を向ける。
「たったとは言わないけど、あと五か月。我慢できそうにないのかい?」
「トキヤの中できゅうきゅう締め付けられるとこ想像しながら何度かオナったんだよ。でも、自分の手よりトキヤの中の方がはるかに気持ちいいんだ。もうオナニーじゃイケないよぅ」
いくらレンでも音也の明け透けさに、トキヤへの同情が湧いてくる。あの潔癖のきらいがある同期が、恋人が他人にこんなこと漏らしていると知ったら、それだけでひと騒動起こりそうだ。
「イッキ。わかったから、少しは慎もうね」
要約すると自慰より気持ち良いことを知ってしまったら、自慰だけでは満足できないということか。
こればかりはレンにもどうすることも出来ない。セックス産業の発達した日本で、それなりの道具を使えばもしかしたら満足が得られるかもしれない。けれど、それに対してトキヤはいい顔をしないだろう。
「そういうことは、ちゃんとイッチーと話し合うしかないんじゃないかい」
「でも……トキヤ、この件は全く聞く耳を持ってくれないんだ――」
しょんぼりと肩を落とした音也は傍目に哀れで、同情を誘う。だからレンもついつい言ってしまった。
「イッチーに、イッキとちゃんと話し合うようにオレからも口添えしてあげよう」
「本当!?サンキューレン!!」
八の字に寄っていた音也の眉が半円を描く。年下の同期のこういうところが可愛くて、レンもつい手を貸してあげたくなってしまうのだ。
「ちゃんとイッチーと話し合うんだよ」
(中略)
「――くそっ」
ムカムカして眠れない音也は、寝付きのよいトキヤに余計苛々してしまう。
「もうっ!お前が悪いんだから!」
結局眠れない音也は、ガバリと布団を捲りながら起き上がる。そうして、一度眠ったら起床時間まで滅多なことでは起き出さないトキヤをよいことに、そのパジャマと下着を剥ぎ取った。
だらんと投げ出された白い脚が、ぼんやりと寝室に浮かび上がる。僅かなフットライトの明かりが頼りだ。
茂みの奥に隠れたそこを想像して、音也は思わず喉を鳴らしてしまった。
もう何ヶ月も音也はトキヤのそこを見ていない。
そっと脚を持ち上げて、横に大きく拡げさせる。そうすると股間が露わになって、まだ力を失った状態のものがくったりと横たわっている。そのさらに奥を目指して、脚を折り曲げて、少し腰を浮かせる。そのシーツと腰の間に枕を突っ込んで、浮いた腰の支えにした。
トキヤの後孔は襞が窄まって、侵入を拒むように締まっている。音也はふむと一瞬考えて、ベッドサイドの引き出しの奥から、まだ未開封のローションを取り出した。この部屋のものはトキヤが管理しているため、ボトルの量が減っていると、万一でもばれる可能性がある。一本開けてしまって、あとで新品に入れ替えて置いた方が安全だと考えたのだ。
「よっと」
包装をベリベリと剥がして、片手でキャップを開ける。そうしてトロトロと中身を手に出して、濡れた指でトキヤの後孔を触る。
襞を指の腹で押すと、弾力を持って指が押し返される。三か月以上触っていないそこは、固く閉じてしまっていておかしくない。音也は優しくマッサージするように、後孔を指の腹で何度も押していく。
「ぅ……」
それを繰り返していると、トキヤが声を漏らした。音也は驚いて、手の動きを止める。
しばらくトキヤの様子を窺うが、眠りからは覚めていないようだ。
それに安堵して、もう一度後孔を覗き込んだ。
今度は指の先端を襞の窄まりに押し込むように押しつける。そうすると、指一本だからだろうか。思ったよりスムーズに中へ埋まっていった。どんどん奥に指を押し込んで、根本まで全て収まってしまう。
「はぁっ」
音也は性器がパンツの中で張り詰めるのを感じた。指に感じる内壁の熱さに、興奮のゲージが上がっていく。トキヤの内壁は、音也の指を包み込むように締め付け、性器を中へ入れたときのことを連想させた。
ずっと悶々としていた音也だ。長くは我慢出来ない。
けれどトキヤに怪我をさせないため。自制心を何とか掻き集めて、音也は丁寧に後孔を慣らす。
ローションを纏った指は、一本だけならスムーズに出し入れ出来る。指を引き抜くと襞が引き摺られるように伸びて、指を中へ入れると、巻き込まれるように襞も中へ入っていく。その様子に、音也は喉を鳴らしてしまう。
「もう一本くらい大丈夫だよね」
性急に指を増やすことを自身に納得させるように、音也は呟いた。
そうして中指と人差し指を添えて、後孔へ指を突き立てる。
「う……んっ」
トキヤがむずがるように声を上げて、身を捩らせた。
「大丈夫。酷くはしないよ」
音也は宥めるようにツルリとした尻を撫で、トキヤに囁いた。
それが伝わったのか、トキヤの身体はまた弛緩する。
それを感じた音也はこれ幸いと指を根本まで入れてしまった。トキヤの内壁は、ひさしぶりに犯されるのをまるで喜んでいるかのように、音也の指をきゅうきゅうと締め付ける。 音也はそんな内壁を優しく押し返すように指を曲げてみる。
何度も音也を受け入れたことのあるそこは、指の形にそって柔軟に拡がってみせる。ぐにゃりと曲がった指に、トキヤの内壁もぐにゃりと歪んだ。
トキヤの中は熱く狭いけれど、充分に柔らかい。
これなら思った以上に早く中へ入れそうだと音也は内心喜んだ。
音也の性器はすでにぱんぱんに膨らんで、今にも弾けてしまいそうになっている。トキヤの中へ入ったら、それだけで暴発してしまいそうだ。本当は一度イッてしまった方がいい。でも折角トキヤが目の前にいるのに、その中へ入れないでイクのも嫌で、音也は辛抱強く我慢する。
音也は指を広げて、トキヤの内壁を拡げていく。何度もローションを足して、潤いを増すのも忘れない。
中が充分に拡がったら、今度は入り口だ。括約筋のあるそこは、どうしてもきつくなりがちだった。トキヤは色んな意味でトレーニングを欠かさないため、何度も音也のものを受け入れているそこは、それでもしっかりと締まっている。
普段なら入り口が弛んでくるのに、音也は大変な我慢を強いられる。しかし寝ているお陰で余計な力が入っていないのがよいのか、いつもよりは入り口は柔らかい。
そこをさらに拡げるため、音也は二本の指を入り口でゆっくりと広げていく。
指の間に隙間が出来てくると、空いた空間から中の様子が見えてくる。
真っ赤に潤んだ後孔は、視覚で音也を誘っているとしか思えない。やわやわと動いている様子が見えて、音也は先走りでじわりと下着が濡れたのを感じた。
そろそろ我慢の限界だった。けれど、まだ入り口の拡張は足りない。音也は唇を噛み締めながら、何度も指を広げたり閉じたりを繰り返して、トキヤの後孔をくつろげていく。
何とか指三本が入るようになってから、ようやく音也は下着の中から性器を取りだした。もうそこはギンギンに勃起して、ちょっとの刺激で爆ぜてしまいそうだ。
音也はなるべく刺激を与えないようにして、トキヤの後孔へ先端を押しつけた。
「――ッ」
トキヤの後孔はまるでイソギンチャクのように、音也のものの先端へ吸い付いてくる。
音也は根本を押さえながら息を止めて一気に、トキヤの中へ自身を収めた。
「はあっ」
トキヤが喉を仰け反らせて、熱い息を吐く。流石に起きてしまいそうなものだが、ぐっすりと夢の中に留まっている。
それを確認して、音也は性急に腰を動かしはじめた。
「――っう……すごっ」
ひさしぶりのトキヤの中はまるで天国のようで、音也はすぐに限界を感じてしまう。
「はあっトキヤ――っ」
「は――あっおとやっ」
音也が激しく腰を揺すると、トキヤの性器が触ってもいないのに、雫を溢しぶらぶらと揺れる。トキヤも夢の中で音也とセックスしているのか、安定の悪かった脚を音也の腰に絡めてきて、しっかりと音也に抱きついてくる。
それに煽られて、音也はトキヤをギュッと抱き締め返した。
「ちゅぱっ」
何か音がして音也がトキヤを見れば、トキヤの唇がもぞもぞと動いている。その様子がキスを求めているようで、音也はさくらんぼのようにふっくらしたトキヤの唇に吸い付いた。
トキヤの唇がぱかりと開いて、その間から舌が出てくる。それを絡め取るように音也も舌を伸ばすと、隙間なく二人の唇はくっついてしまった。
くちゅくちゅと音を立てながらキスをして、休むことなく腰は前後に揺れる。音也が性器をトキヤの中へ差し入れると、中の襞が波打ってきゅっと締め付けてきて、我慢出来なかった先走りがぴゅるぴゅるとトキヤの中へ飛び出ていく。
やっぱりトキヤの中は最高だと思いながら、音也はラストスパートをかける。
「トキヤ――」
愛しい人の名前を呼んで、音也は三か月夢見た場所で、絶頂を味わった。
(後略)
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