箱庭にいっぱい。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい。楽しいサーカスの時間だよ!」
呼び込みの声に、次々と人がテントへ吸い込まれていく。
看板スターだった猛獣使いを欠いたサーカス団は、それでも行く先々で人気者だ。
嶺二はひさしぶりに訪れた地で、眼を細める。この地でかつて、嶺二は小さい子どもと獣を拾った。その二人は今頃どこで何をしているのか。
最終日の公演前に、嶺二は懐かしい思い出に浸っていた。
そんなとき聞こえた声。その声に嶺二は驚いた。
「すみません。大人二人で」
「え――」
そこには、嶺二が最後に見たときより大人びたあの二人。音也とトキヤが立っていた。
嶺二はまるで幽霊でも見たような表情で立ち尽くす。
「れいちゃん驚きすぎ――!」
赤毛の青年姿の音也がケラケラと笑っている。たった一度見ただけだったが、印象深い容姿で嶺二は覚えていた。
「音也、笑いすぎです」
こちらは嶺二も見慣れた姿のトキヤだ。最後に姿を見てから四年近く経っているが、変わっていない。
「ようこそ! おとやん、トッキー!」
嶺二はじわじわと沸き上がってくる喜びに身を任せ、両手を広げて二人に近づいていく。
「れいちゃんひさしぶりっ」
音也が両手を広げて近寄って来てくれた。
トキヤはクールに肩を竦めている。
あの可愛かったトッキーはいづこ……と内心がっかりしながら、嶺二は音也を抱き締めた。
「どうしたのさ、二人とも」
嶺二は、きっともう二度と会うことはないと思っていた二人の姿に、驚きを隠せない。
「トキヤと二人で相談して、サーカス団に戻ろうって。俺達の家はここだから――。だかられいちゃん!」
音也が嶺二の腕から離れて、トキヤと二人で並ぶ。
「もう一度、俺達をここに置いてください!」
「お願いします」
嶺二は仲良く眼下に並ぶ二つの旋毛を眺める。嶺二の可愛い後輩達、音也とトキヤが深々と頭を下げていた。
「そういうことなら、ぼくじゃなくてミューちゃんに言わないと」
嶺二には流石にそこまでに権限はない。団長のカミュへお伺いを立てる必要がある。
二人を見て、嶺二は思わず微笑を零す。仲の良さは相変わらずだ。
「わかった。ぼくも一緒にお願いして上げるから、公演が終わったら二人ともここで待ってて」
「本当!?」
「ありがとうございます」
ほんの小さな頃から知っている二人に、嶺二もどうしても甘くなってしまう。頼られてしまえば、ノーとは言えない。
「ミューちゃんがいいって言うかは保証できないけど、ぼくも出来るだけお願いしてみるよ」
開演を待ち望んでいる周囲の熱気に、音也もトキヤもそわそわと落ち着かない。いつも舞台に上がっていた二人は、客としてステージを観る機会など、ほとんどなかった。音也に至っては初めてだ。
「トキヤ」
音也は意味もなくトキヤの名前を呼んでしまう。
「少しは落ち着きなさい」
そんな音也に、トキヤは笑う。そわそわと何度も組み替えられる両手に、トキヤはそっと手を伸ばした。
「あっ」
トキヤが音也の手をそっと握り締めたとき、音也がステージの上の人影に、声を上げた。
「翔……」
そう。そこにはピエロの格好をした翔が立っていた。
「レーディース&ジェントルマン! ようこそ――」
聞き慣れた口上が始まる。
「変わってない……」
「ええ……ええ」
トキヤは音也の言葉に何度も首肯する。
まずはピエロの玉乗り。小柄な翔が軽やかにステージを一周する。
「うわあっすごい!」
隣に座っている子供が歓声を上げる。
「あっ――那月」
ステージ脇から、ふわふわの髪の毛の那月が出てきた。
「翔ちゃんっ」
那月の掛け声で、翔が玉の上から那月の肩へ飛び移る。
「相変わらず身軽ですね」
那月は飛び乗ってきた翔を、肩へ立たせてその状態で玉乗りをはじめた。
「ヒュ――ゥ」
観客はその様子を観て、囃し立てて喜んでいる。
「観客としてあらためて観ると、やはり違いますね」
そんな周囲の様子を見回して、トキヤは感嘆と呟いた。
「みんな楽しそう」
それに音也も頷く。
「またあのステージに戻りたい」
人々へひとときの夢の時間を提供する舞台。キラキラと輝いている舞台。
「――そうですね」
トキヤは音也の言葉に頷いた。
(中略)
片付けが終わって、トキヤは嶺二と一緒に寝床となっているテントへ戻って来た。音也も戻っていて、翔とカードゲームをしている。
「トキヤ、お帰り〜〜」
「音也。ただいま戻りました」
トキヤは疑問も抱かずに、音也の隣へ腰を下ろす。
「トッキーがここにいるの、何か新鮮だねぇ……」
そんな嶺二の呟きに、トキヤは確かに、と思う。以前は音也のいる厩舎に入り浸りで、そこで寝泊まりもしていたから、トキヤが皆と一緒の寝床で眠ったことはない。
「二人っきりにして上げられなくて、ゴメンね」
からかい交じりの表情で嶺二がそんなことを言う。
「あ……」
それでようやく気付いたのだろう。音也が呆然としている。
「トキヤぁ――」
どこか甘え交じりの声で名前を呼ばれて、トキヤはキッパリと宣言する。
「ダメですよ」
音也が何を要求しているのか、トキヤにはそれだけでわかった。
「でも……」
でももだってもない。サーカス団は集団生活で、二人きりの空間などない。そんなところで、そういう行為が出来るはずなかった。
「ちょっとだけ――」
「どういう意味ですか……」
トキヤは音也の無理な要求に溜息を吐く。
「私たちのそういう姿を、他人に見せるつもりですか」
トキヤがジロリと音也を睨み付けると、それには必死に首を振っている。
「それはダメ。トキヤの裸は俺以外がみちゃダメなの!」
「じゃあ、選択肢は一つしかありませんね」
「そんな……」
絶望。そんな表情の音也に、側にいた翔が何とも言えない表情で、顔を背けている。
「お前ら。そういう会話は、他人がいないところでしろよな」
割と明け透けな人が多いサーカスという世界で、翔は初心だったようだ。
「すみません」
トキヤもつられて恥ずかしくなり、翔から視線を外す。
「さあっ! みんな戻って来たから、そろそろ寝るよ」
そんな空気の中、年の功か。嶺二が平然と声を掛けた。そもそもの言い出しっぺは嶺二だったのだが。
そうして、さあ眠ろうとなったとき、もう一度問題が思った。
「トキヤの隣は俺! 他の人はトキヤの隣になっちゃダメ!!」
「音也。我が儘は言わないでください」
トキヤにしてみれば、誰が誰の横に寝ようと構わないことで、音也が何に拘っているのか理解に苦しむことだった。
けれど音也がこれだけは譲れないと、絶対に譲歩しなかったため、すったもんだの末、トキヤが一番奥、その隣に音也という、トキヤは他の人から隔絶されるポジションでようやくことは落ち着いた。
さあ。やっとこれで眠れるぞとなったとき。
「トキヤ……」
音也がトキヤの方へすり寄って密着してくる。
そのくらいならトキヤも目を瞑った。今まで音也とは、ベッタリとくっついて寝ていたのだから、今さら突き放せなかったのもある。
けれど……。
「おとやっ」
トキヤは周囲を憚って小声で音也へ非難の声を上げる。
後ろからトキヤに抱きついている音也の下半身。それが不穏な空気を醸し出しているのだ。
尻に当たる音也のものが兆しはじめていた。
「大丈夫」
何が大丈夫なのか理解出来ない中、音也がトキヤの肩口に顔を埋めてくる。
ゆったりとした寝間着は、トキヤの白い首筋を無防備に露わにしている。そこを音也の舌が舐めていった。
腰に回っていた手も、不穏に動き出す。腹の薄い皮膚と、尻の狭間をツツーと指が這っていって、トキヤはビクリと身動いでしまった。
下着の上から後孔を指の腹で押されて、トキヤの腰の奥がズクリと疼く。
トキヤはついモジモジと内股を擦り合わせてしまった。抱かれ慣れたトキヤの身体は、音也のほのかに立ち上る体臭の中、性的に触れられて、我慢出来るはずがない。
「音也――そとっ外に行きましょう」
何とか理性をつなぎ止めて、トキヤは服の上から音也の手を握り締めた。
隣に仲間が眠っている状況でイタすなど、トキヤにとって許容範囲外だ。
「ん」
トキヤの提案に頷いた音也が、むくりと起き上がる。トキヤも両手を突いて身体を起こすと、音也が支えてくれる。
「立てる?」
顰めた声で聞かれて、トキヤは頷いて、何とか立ち上がる。けれどフルフル震える両脚は、まるで生まれたての子鹿のようだ。
それを見た音也は、トキヤを抱き上げる。
仲間を踏まずに出口にたどり着ける自信のなかったトキヤは、大人しく音也の腕の中へその身を預けた。
そのまま二人は誰にも気付かれずにテントの外へ出て、少し離れた資材置き場にしているテントへ潜り込んだ。
「トキヤ……」
音也が息を荒くして、トキヤと向かい合う。固い地面に座らされたトキヤは、正面にしゃがみこんだ音也と向き合って、そっと瞳を閉じた。
トキヤの唇に音也の唇が重なる。
「くちゅ」
誘われるように開かれたトキヤの唇の隙間に、音也の舌が潜り込んだ。
「う……っん」
くちゅくちゅと舌を絡ませながら、トキヤは音也に腰を抱き寄せられる。その勢いで、トキヤは音也の膝の上に乗り上げた。
当然のように、腰に回された音也の手が、下衣の中へ潜り込む。性急な音也の手は、後孔を探るように動いて、クイッと指一本を潜り込ませてきた。
「う――ったっ!」
その衝撃に身動いだトキヤから、苦痛の声が上がる。慣れたトキヤの後孔は、指一本でそんな反応をするほど狭くない。違和感を感じた音也は動きを止めて、トキヤを観察した。
「膝が痛いです」
そんな音也に、トキヤが素直に応える。
固い地面に着いた膝が擦れて痛みを訴えていた。
「あ――」
それに音也は周囲を見回す。地面に薄布を敷いただけのそこは、確かに固くでこぼこしている。音也の尻も、実は地味に痛みを訴えていた。
けれど手近に下に敷く柔らかなものもない。それでも諦めきれない音也は、トキヤを立たせて後ろを向かせ、比較的安定していそうな箱に両手を突かせた。
「音也?」
それにトキヤは不安を露わにしてしまう。いつもベッタリとひっつくか、正面から向かい合ってすることの方が多い。まったっく姿が見えない状況など滅多にない。
そんなトキヤに音也はにっこりと笑いかけて、下衣をズルリと脱がせた。
そうして双丘に手を掛け、両手でそこを割り開く。
そこはまだ濡れていなかったが、少しだけ期待にヒクヒクと動いていた。
「かわいい」
それを見た音也が興奮する。もう待てない。そんな勢いで、音也はトキヤの後孔へむしゃぶりついてきた。
「ひゃ――あッ……うぅ」
思わず大きな声を出してしまったトキヤは、慌てて片手で口を塞ぐ。そうしないと、音也の舌に後孔を舐められる行為に、嬌声が止まらなくなりそうだった。
初めは窄めた舌が入り口をツンツンと突く。それにトキヤに後孔がヒクヒクと反応すると、唾液を纏ったそれは入り口をくぐって中へ挿ってきた。
入り口のごく浅い部分を解すように、唾液を塗り込めるように、舌がグルリと一周する。それだけでトキヤの膝はガクガクと笑って、今にも座り込んでしまいそうになる。
それなのに、唾液を足すように何度も舌は出入りして、奥まで伸ばされる。
「ふ――ぅぅっ」
口を手で押さえて、トキヤは嫌々と首を振る。
もう限界だった。口を押さえていない方の手で、目の前の箱に縋り付いているが、ずるずると身体が沈み込んでいく。
「おとやぁ……」
トキヤは無意識に甘えるような声で、音也の名前を呼んでいた。
そんなトキヤに、音也が尻から顔を上げる。
その音也は少し悩むように逡巡して、フッとその姿を変えた。獣の姿だ。
音也は地面に仰向けになる。腹を見せた音也が、グルグルと鳴いて、トキヤに上に乗るように促した。
その音也の促しに、トキヤはよたよたとよじ登る。音也の顔に尻が来るように音也を跨いで、トキヤは音也の腹に顔を埋めた。
むわっと獣の匂いが立ちのぼる。
ずっと音也と一緒にいるトキヤにとって、その匂いは安心する匂いで。トキヤはくったりと力を抜いて、音也にされるがままになった。
「ふぅ――」
嬌声は音也の毛皮に音を吸い込ませ、トキヤはどんどん乱れていく。人の時より長い音也の舌が、トキヤの後孔へ挿っている。音也の獣の手は器用には動かない。だからトキヤも協力して、なるべく後孔が開くよう両脚を大きく広げる。
サーカス団を離れている間に覚えた胸への愛撫はお預けだが、ざらざらとした舌で奥まで舐められると、それだけで下腹の奥がきゅんきゅんと疼いてくる。
とろりと解けたトキヤの後孔は、出入りする音也の舌に、可憐に花開く。トキヤは無意識に勃起した自身のものを音也の胸に擦りつけ、ときおり自分で胸の粒を押しつぶしながら、音也の顔に尻を押し付けるように腰を振っていた。
「おとや――もうっもうっ」
トキヤの顔の前にある音也のものは、すでに完全に勃起している。ブルンブルンと動くそれは、トキヤの頬に先走りを振りかけてくる。
早くこれを挿れて欲しい。そんな欲求に支配されたトキヤは、音也のものへ両手を伸ばす。そうしてそれへ頬擦りして、伝い落ちる雫へ舌を伸ばした。
「トキヤ――っ」
ふっと音也の姿がもう一度変化した。今度は人の姿に。
そうして起き上がる音也の上から、トキヤは自然とずり落ちていく。
「あ……」
目の前から消えた音也のものに、トキヤは声を上げる。
いつの間にかトキヤは、完全に起き上がった音也の横に寝転んでいた。
そんなトキヤを音也が荒々しく抱き上げて、後ろ向きに抱え上げる。子供がトイレをするような格好だった。
そのまま音也のものの真上に尻が固定される。
音也の唾液でデロデロに濡れた後孔に、先端が当たっている。
「あ……」
トキヤの口から、期待交じりの音が漏れた。
徐々に下ろされる身体。トキヤの自重も手伝いながら、音也のものが中へ挿ってくる。
「ふ――ッン」
嬌声を封じるため、トキヤは両手で自身の口を塞ぐ。そうして、後孔の襞を押し開いて挿ってくる音也のものを、受け入れた。
慣れた質量と熱がじわじわとトキヤの直腸を満たしていく。
いっぱいに開かれた後孔は、悦んで音也のものへしゃぶりついている。トキヤの中はまるで誂えたようにおとやのもにぴったりだ。
ずぼずぼと前後に揺さぶられる度、トキヤは嬌声を我慢して息を止める。そのせいで音也のものを締め付けてしまい、ますます元気になってしまう。
トキヤも自身を張り詰めさせて、腹につきそうなほど勃起させている。一度も触られていないそれは、それでも今にも弾けてしまいそうだった。
身体を持ち上げられてふっと落とされると、それだけでトキヤのものからはびゅっびゅっとピストンのように雫が吹き出ていく。
「ぅ――ぅぅっ」
もう我慢出来ない。そう思ったトキヤは、一際強く首を振る。
グイッとトキヤの身体が持ち上げられた。
トキヤは反射的に後孔をギュッと引き絞る。そこにまるで突き破るように音也のものが挿ってきた。
「―――ッッッ!!」
トキヤは見開いて喉奥で悲鳴を上げる。
音也のものが一気に腹の中を擦って行く。トキヤのものからは白い液がドロドロと飛び出している。
トキヤの身体は痙攣を起こした。中も射精の衝撃に細かく震えている。
その振動に後押しされたのか。音也のものもトキヤの中で弾けた。ドクドクとトキヤの腹の中に、音也の精液が流れ込んでくる。
「トキヤ……」
いつも甘やかな声のくせに、こういうときだけ音也の声は低くなる。擦れたそれに、トキヤの脳はじぃんと痺れた。
「はあはあはあっ」
どちらのものかわからない荒い息がテントの中に響く。
時間にして少しだろう。射精の強張りが解けてくると、トキヤはグッタリと音也に寄り掛かった。中にはまだ音也のものが挿ったままだ。
そんな態勢でいたら、音也がトキヤを抱えるように持ち上げて、クルリと前後を入れ替えてしまった。
「ああっ」
不意打ちに、トキヤは声を上げる。まだ挿ったままの音也のものを軸にするように身体を回されて、擦れた内壁に思わず感じてしまう。
向かい合うようにトキヤを動かした音也は、そのまま後ろに倒れ込みながら、その姿を器用に獣のものに変えてしまった。
音也はこんなことばかり上手くなる。トキヤは呆れ感じながら、音也の胸に倒れ込む。
ふかふかの天然の毛皮はどうしたって気持ちいい。
「もうちょっとトキヤの中にいたい」
下敷きにした音也がそう言った。
トキヤは獣の姿の音也にそうおねだりされて、ついその要求をのんでしまう。そもそも音也のおねだりには弱いトキヤだったが、獣姿でそれをされるともうだめだ。十年以上培ったものは簡単に変えられない。
トキヤは諦めて、態勢を変えたことによって抜け掛かっていた音也のものを受け入れるように、後孔から力を抜いてもぞもぞと動く。無理がある角度のため、尻に片手を添えて、後孔を強制的に拡げた。
そうして芯を持った音也のものを腹の中へ収めていく。
音也の協力もあって、何とかトキヤの中に、もう一度音也のものが収まった。
「ふぅ……」
思わず一仕事終えたような達成感に、トキヤは溜息を吐いてしまう。
「トキヤの中、温かくて気持ちいい」
音也は憎らしいくらい幸せそうだ。
目を細めて舌で顔を舐めてくる音也に、トキヤも目を細めながら両手を伸ばした。
毛皮に覆われた顔を、両手で包み込む。
「――あなたのは熱いくらいです」
トキヤが意図的に後孔を締め付けると、中の音也のものがピクリとサイズを変える。
「あ――っ」
後孔に感じる圧迫感に、トキヤは密やかに吐息を零す。
「そんなことされたら、一回じゃ我慢出来なくなるよ……」
情けない表情になった音也に、トキヤは笑う。
「一回で我慢するつもりだったのですか」
トキヤの中の音也のものは、すでにそれなりの硬さになっている。これで後戻りなど無理だろうことは、トキヤにもわかった。
「う……そのつもりだったのっ」
獣姿の音也の上に、トキヤは座り込む。いわゆる騎乗位の格好だ。
少し尻を突き出して、トキヤはゆらゆらと身体を揺らし始めた。
「ぅ――」
そうすると、さらに音也のものが硬度を増す。トキヤは音也の腹に両手を突いて、フルフルと震えた。
何とか少し腰を持ち上げ、もう一度挿入させる。そうすると、先ほど音也が中で放ったものが外へ溢れ出す。後孔を白いもので汚しながら、トキヤは数度抽送を繰り返した。
「はあはあはあっ」
トキヤの息は上がり、額からは滅多に見られない汗が噴き出ている。
何とかもう一度腰を動かして、引っ張り出した音也のものを中へ収めて、トキヤは力尽きた。
「限界?」
音也に尋ねられて、トキヤはコクコクと頷く。
もう起き上がる体力もない。
それを見た音也に、クルリと抱き込まれるように態勢を入れ替えられ、トキヤは地面に背中をつけた。
獣の姿の音也がのし掛かる。
音也の腰に脚を絡め、トキヤは音也の首へ抱きついた。ゆっさゆっさ音也の体躯が揺れる。その動きに合わせて、トキヤの身体も揺れる。地面に擦れる背中の痛みなど、快感によって感じなかった。
「ああっ」
トキヤは音也の毛皮に顔を埋めて、なるべく声を押し殺した。トキヤのものは音也の腹との間で、グリグリと刺激され、胸の頂も毛に擦られている。
そうして音也の大きなもので内壁を擦られて、あっと言う間に絶頂はやってくる。
「おとや――っもうっもうっ」
トキヤの頭からはここが資材置き場だとか、誰かが起きてくるのでは、という心配は吹き飛んでいた。
ガツンと音が鳴りそうなほど荒々しく音也のものがトキヤの内壁を擦って、トキヤの頭は快感にスパークする。
「あっ――ああ!!」
偶々そこにあった音也の毛皮によって、嬌声は控えめなものになった。けれどテント内に声は響いている。尻から起つ水音も。
トキヤは引き絞るように後孔を締め付けた。前からは精液が溢れている。腹の中の音也のものも、どうやら射精したらしい。
テントの中は噎せ返るような雄の匂いで溢れかえった。
「あ……っあ……っ」
トキヤの頭の中は、焼け付くような腹の中の奔流に、ほとんどとんでいる。
トキヤはしばらくピクピクと痙攣して、ドサリと脱力する。それによって、中から音也のものが抜け落ちた。
だらしなく開かれたトキヤの脚の間には、大量の精液が流れ出てくる。
ぼうっとしたトキヤに、音也が顔を近づけてきた。
獣姿の音也に、トキヤは無意識に両手を伸ばす。そうしてそっと唇を開いて、音也を誘った。
音也の舌がトキヤの口内へ入ってくる。
ざらざらとして長い舌は、トキヤの口内を余すところなく舐めしゃぶる。人の姿では届かない喉奥までもを舐められて、トキヤはこほっと咳き込んだ。
口の中には音也の口内から溢れた唾液が、流れ込んでいる。上も下も音也の体液でいっぱいだ。
そんな中でも、二回の射精はトキヤに眠りを連れてくる。受け入れる負担は初めの頃に比べて減ったといっても、やはり受け身はトキヤへ負担を掛ける。
だから音也もトキヤを無理に起こしはしない。
まるでその眠りを促すようにトキヤの顔を優しく舐めてくる音也。
「おやすみ。トキヤ」
音也の声を最後に、トキヤの記憶はストンとなくなった。
(後略)
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